泌尿器について
人体の器官のうち、主に腎臓や尿管、膀胱、尿道、前立腺など、尿の産生から排尿に関係する臓器を「泌尿器」と呼びます。対象とする臓器の形態や位置が男性と女性で大きく異なるため、前立腺肥大のように男性のみの疾患もあれば、膀胱炎など女性に多く見られる疾患もあるのが特徴です。
がんとは
身体の細胞の一部が突然変異し、これが徐々に増殖して周囲の組織に浸潤したり、他の臓器などに転移を起こす疾患です。適正な治療が行われない場合、全身の様々な部位に転移していき、最終的には死に至ります。
もっとも、医学・医療の進歩により、早期の状態で発見して治療を行えば、がん細胞を退治し、元の健康的な生活を取り戻せるケースも増えてきました。多くの方が理解されているかと思いますが、がんは早期発見がとても大事です。定期的にがん検診を受けるとともに、気になる症状が見られた場合は、お早めに医療機関を受診し、必要な検査を受けるようにして下さい。
泌尿器の主な癌
など
腎がん
腎臓にできる腫瘍のうち、腎実質(腎臓のさまざまな働きをする実質的な組織)の上皮細胞ががん化し、悪性腫瘍になったものです。
腎臓は身体の奥深くにあるため、初期の段階では自覚症状が現れず、他の病気のための検診で偶然発見されることがよくあります。ある程度進行すると、腰や背中の痛み、わき腹のしこり、血尿、食欲不振、貧血、吐き気、体重減少などの症状が現れたりします。このような症状がある方は、お早めに医療機関を受診し、必要な検査を受けることが大切です。
診断にあたっては、問診などの結果に基づいてCT検査、超音波(エコー)検査などを行います。画像検査だけでは良性・悪性の判断がつかない場合には、生検(組織の一部を採取して顕微鏡で詳しく調べる検査)を行うこともあります。
治療方法を選択する際には、がんの進行度に戻づく「TNM分類(原発腫瘍や所属リンパ節、遠隔転移の状況を踏まえた分類方法)」を参考にします。腎がんは放射線治療や抗がん剤治療では、治癒は期待できないため、早期がんの場合は手術療法が第一選択となります。特に4cm以下の小径腎癌の場合は、腎機能の温存が期待できる腎部分切除術が有用です。一方で、診断時にすでに転移している場合には、手術・薬物治療(分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤)・放射線治療などを組み合わせて治療を行います。
腎盂がん 尿管がん
腎盂から尿管、膀胱の尿路の内側は尿路上皮と呼ばれる粘膜でできています。この細胞から発生するがんを尿路上皮がんといい、腎盂がん・尿管がんのほとんどが当てはまります。そのため、腎盂・尿管がんという一つのグループとして扱われ、治療法にもあまり差がありません。腎盂は腎臓の一部ですが、腎がんとは性質が異なるため、別の疾患として扱います。
このがんに罹患すると、肉眼でもわかる血尿が出ることがあります。初期の段階では痛みや発熱を伴わないため、医療機関を受診せずに放置してしまう方もいますが、がんが進行すると治癒が難しくなっていきます。血尿が出たときは、出来るだけ早く医療機関を受診することが大切です。このがんが疑われるときは、尿細胞診、腹部超音波検査、腹部CT検査を行います。画像診断だけでは判別しにくいケースでは、内視鏡やカテーテル検査で腎盂尿管内の状態を調べることもあります。
腎盂または尿管がんが見つかり、他臓器への転移がない場合は、まず手術を中心に考えます。腎盂・尿管がんは再発転移しやすいのが特徴なので、がんのある部分のみの切除ではなく、がんが発生した片側の腎臓および尿管をすべて摘出します。浸潤性の腎盂・尿管がんの場合は、手術前後に抗がん剤治療(化学療法)を行うこともあります。
ほかの臓器に転移している場合は、シスプラチンと呼ばれる抗がん剤を中心とした数種類の抗がん剤を用いた化学療法(多剤併用化学療法)を行います。
なお、放射線による治療を選択することは少ないのですが、転移があって根治が望めない場合、年齢や合併症によって手術が難しい場合、痛みの緩和が優先される場合などでは、放射線治療を取り入れることもあります。
膀胱がん
膀胱内の粘膜下層や、その下の筋層に発生するがんです。尿路(腎、尿管、膀胱、尿道)のがんの中では最も頻度が高く、特に60~70歳代の男性で多く見られます。
膀胱への刺激が増え、頻尿や排尿痛などの症状も見られることがあります。そのため、繰り返す膀胱炎や難治性膀胱炎の場合は、膀胱がんを疑って精査する必要があります。進行すると、尿道が細くなり排尿が困難になったり、尿管が閉塞して水腎症・腎不全を引き起こすことがあります。
当院では鎮痛薬を含んだゼリーを用いて、痛みの少ないやわらかいオリンパス社製の軟性膀胱鏡で検査を行います。
治療に関しては、進行度を踏まえて手術、抗がん剤治療、放射線療法などを選択します。膀胱がんの多くは筋層非浸潤癌(膀胱粘膜にとどまる早期がん)で、1週間程度の入院で尿道から膀胱鏡を挿入して腫瘍部を電気メスで切除する経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)を行います。ただし、膀胱がんは非常に再発しやすく、約半数で再発します。そのため、再発予防のために膀胱内に抗がん剤またはBCGという薬剤を注入する場合もあります。
一方で、がんが筋層にまで達しているとき(筋層浸潤癌)は、抗がん剤治療と併せて膀胱全摘除術が中心となります。なお、合併症のリスクなどによって手術が難しいケースでは、放射線治療が選択されます。
前立腺がん
男性特有の前立腺に発生するがんです。肺癌、胃癌、大腸がんとともに男性がかかるがんで最も多いがんのひとつです。年間約10万人が新たに前立腺がんと診断され、約1万人以上が命を落としておりその数は増加の一途です。また、欧米での調査で父親または兄弟に前立腺がんにかかった人がいる場合、本人が前立腺がんになる確率はそうでない人に比べ2〜3倍になるという報告があり、特定の遺伝子の関与が示唆されています。
前立腺は尿道から離れた部位であり、初期段階では目立った自覚症状が少なく、かなり進行してから医療機関を受診されるケースもあります。もっとも、早期でも血液中のPSA(前立腺特異抗原)という腫瘍マーカーが上昇するので、血液検査の検診で見つけることが可能ですが、日本ではまだまだこの検査の普及が十分でありません。一方、欧米では男性の70-80%がPSA検診を受けており、その効果か近年は前立腺がんの死亡率が低下しています。このように前立腺がんは、早期のうちは症状に乏しく、自覚症状が出たときにはがんが進行している場合が多いので、男性は50歳を過ぎたら定期的に前立腺がんの検査を受けることが大切です。
がんが進行した場合には排尿障害や血尿といった症状が出ることがありますが通常は自覚症状はなく、近年ではPSAの検査異常で受診されることが多くなっています。進行した場合、前立腺がんは骨へ転移することが多いため骨の痛みや骨折によって気づかれることがあります。ただ、PSAが高かった場合(正常値は4.0以下です)でも、前立腺がんであるとは限りません。
PSA自体は正常な前立腺にも存在しており、前立腺肥大症や前立腺炎、体調などによっても数字が上がることがあります。したがって、PSAが高かった場合はこれらの疾患がないかどうかを確認すると同時に、PSAの再検査やMRI検査などを行います。
がんの疑いが強ければ、連携病院に御紹介させていただき前立腺針生検でがんの有無を確定します。もしもがんがあることが確定した場合には、CTや骨シンチ等で転移の有無を確認したうえで治療方針を検討します。がんがなかった場合には、当院で引き続き経過を見させていただきます。
前立腺がんの治療方法としては、手術、放射線治療、ホルモン療法(内分泌療法)があります。この他、特別な治療を行わずに経過観察するPSA監視療法(待機療法)が選択されることもあります。これらの治療法の中から、診断時のPSA値と腫瘍の悪性度(グリーソンスコア)、リスク分析、年齢と期待余命、患者さんの病気に対する考え方などを考慮し実際の治療プログラムを決めていきます。
横浜市の前立腺がん検診(PSA検査)
当院では、横浜市からの委託により、前立腺がん検診(前立腺特異抗原:PSA検査)を実施しています。横浜市在住で50歳以上の男性はPSA検査をお申込みいただけます。
今までに検査を受けていらっしゃらない方はぜひ一度検査されることをおすすめします。
また、近隣のクリニックで前立腺癌検診の結果、PSA値が高く前立腺癌の疑いと判定された場合のさらなる精密検査(2次検診)も行っております。
年齢、PSA値の推移、MRI検査などから総合的に判断して、前立腺癌の可能性が高く前立腺針生検が必要と判断された場合は近隣の専門病院へ生検を依頼します。一方で、たとえPSAが高値であっても前立腺癌の可能性が低く、患者さんにとってメリットが少ないと判断された場合には、不必要な生検はせずに外来通院しながら定期的なPSA検査(3~6ヶ月毎)で重篤な病態にならないよう細心の注意を払いながら経過観察していきます。
陰茎がん
男性の陰茎に発生するがんです。日本人の発症率は人口10万人あたり1人未満であり、非常に少ない症例です。初期段階では痛みがあまり出現しませんが、亀頭や包皮部分にしこりが出来ます。進行すると痛みが出てきて排尿困難になることもあります。
治療に関しては、主に手術を選択します。腫瘍の進行具合で、陰茎温存療法や陰茎部分切除術、陰茎全摘術を選択していきます。病変部が大きいときはリンパ節も同時に摘出し、術前と術後に抗がん剤治療を併用します。
精巣がん
精巣内の精子を作る精細管上皮細胞から発生するがんです。日本人全体では人口10万人当たり1人程度の発症率に留まっていますが、20~30歳代の男性ではよく見られます。精巣が痛みを伴わず大きくなっている、精巣が硬くなっているなどは、精巣がんが疑われる症状なので恥ずかしからずに速やかに受診して下さい。このがんは比較的悪性度が高く早期から転移をきたすことがあるので、診断後直ちに連携病院へ紹介・手術が必要です。
具体的な治療法は、がんの性質や腫瘍マーカーの値、進行度などによっても異なりますが、まずは病理診断も兼ねて高位精巣摘除術などの手術が行われます。早期がんであれば手術単独で完治する可能性が高いです。すでに転移がある進行性精巣がんの場合でも、専門施設での長期間の抗がん剤治療によって完治出来る場合があります。
- 診療科目
- 泌尿器科
- 住 所
- 〒241-0821
神奈川県横浜市旭区二俣川2丁目50番地14 コプレ二俣川7階 - TEL
- 045-369-0181
- アクセス
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※第2・4土曜日のみ
休診日:日祝日、第1・3・5週土曜日
- 診療は予約制です。WEBまたはお電話で予約をしてからお越しください。
- 火曜日の午後・木曜日の午後・土曜日の診察は院長以外の医師が担当になることもあります。
- 午後の受付は17:30で終了とさせていただきます。
- 尿検査がありますので排尿がすぐできる状態でお越しください。